いよいよ2018年9月より、厚生年金に加入するパート労働者の適用対象を拡大する方向での議論が始まりました。
厚生労働省では、従業員数501人以上という制限の撤廃や、月額8万8000円以上という基準を6万8000円以上に引き下げるといったプランが検討されています。
私も現在派遣で週3日働きながら「副業」「複業」をしていますが、現状社会保険に加入できないため、この議論の行方に注目している一人です。
それでは早速議論の概要について確認していきましょう。
目次
なぜ適用対象拡大する必要があるの?
政府は、2年前(2016年10月)の改正に続いて、厚生年金に加入するパート労働者をさらに拡大する方向で議論を進めています。
人口減少、高齢化など様々な要因によって、将来的に現在の給付水準を維持できなくなる可能性が高まっています。
将来、低所得で生活ができなくなる高齢者が増えないように、年金を少しでも増やすため、このような見直しが検討されているのです。
政府は2020年の法案提出を目標としており、法案が成立すれば、最短で1年後の2021年にも施行される見込みです。
段階的に実施される厚生年金加入対象の拡大
厚生年金に加入するパート労働者の適用対象の拡大は、これまで段階的に実施されてきました。
平成28年10月までの加入条件
アルバイト、パートタイマー、日雇い労働者など、正社員ではない労働者が社会保険(健康保険と厚生年金)に加入するには、「一定以上の雇用契約期間があり、更に1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上」という条件を満たす必要がありました。
平成28年10月以降の加入条件
平成28年10月1日から、従来の加入条件を満たさない短時間労働者についても、新たに定められた特定の条件を満たす場合に限り、社会保険に加入できることとなりました。
短時間労働者の加入条件
- 1週間の勤務時間が20時間以上※残業時間は含まない
- 賃金が月額88,000円以上(年収106万円以上)※残業代、通勤手当、賞与などは含まない
- 従業員数が501名以上の会社に勤めていること
- 学生(夜間、通信、定時制の方は除く。)でないこと
- 予定される雇用期間が1年以上であること
- 70~75歳未満である
平成29年4月以降の加入条件
平成29年4月には従業員500人以下の企業であっても労使の合意があれば適用拡大を可能とした(国・地方公共団体は規模にかかわらず適用)。
今回の議論ポイント
今回の議論のポイントは
- 厚生年金加入時の月収要件を「8.8万円以上から6.8万円以上」に引き下げ
- 「従業員数要件」の引き下げ又は撤廃
2016年の適用拡大の際は、新規加入者は25万人程度と予想されていましたが、実際には37万人の加入者増となったのです。
今回さらに厚生年金に加入するパート労働者の適用対象の要件を緩和することで、最大200万人の加入者増を見込むとしています。
短時間労働者の適用拡大のメリット
国民健康保険と国民年金保険料(平成30年度月額16,340円)を自分で払っている人については、勤務先の社会保険に加入することで保険料が安くなり保障が手厚くなるメリットがあります。
一方、これまで専業主婦だった人や扶養の範囲内で働いていた人など、被扶養者だった人については、社会保険に加入すると毎月の手取り額が減り、損をする場合もあります。
「副業」「複業」「兼業」など多様な働き方が広がっている中、私のように週3日派遣で働きながら副業をするものにとって、厚生年金加入条件を勤務時間や賃金で満たしているものの、従業員数が501名以上の会社ではないため、加入したくてもできない人もいる訳です。
平成29年4月に労使の合意があれば、従業員数が500人以下の企業のパートの厚生年金加入は可能になりましたが、労使合意することは、現状では難しいようです。
改正されれば義務付けられることになる社会保険の加入条件。
適用対象を拡大することで、労働者側は老後に厚生年金を受け取れるメリットがありますが、保険料は労使折半で企業側の負担が増えるため、中小企業からの反発も予想されます。
今後の動向には注目したいところです。
また新たな情報が入れば、このブログでも取り上げていきたいと思います。